〔巻頭言〕中東情勢の混乱と我が国が採るべき道

「国体文化」平成26年9月号 巻頭言

 パレスチナ自治政府ガザ地区におけるイスラエルの軍事行動は終結する気配がない。空爆のみならず地上部隊を侵攻させたイスラエルに対し、ガザ地区を実質的に支配するハマスはロケット弾で応戦してゐる。住民の犠牲者も千数百人に及ぶ模様だが、住民の多くはイスラエルの一方的建国に伴つて故郷を追はれた難民であり、イスラエルに抵抗を続けるハマスへの支持は根強いといふ。たとへ一時的な停戦が実現しようと、ユダヤ人シオニストが主導するイスラエルとイスラム教スンニ派原理主義組織であるハマスとの妥協は困難ではないか。

 加へて厄介なことに、イスラエルの隣国であるシリアでは、アサド政権と自由シリア軍による内戦の間隙を縫つて民兵組織ダーイシュが影響力を強めつゝある。アルカイダの分派である同組織は、シリアからイラクにかけての地域を支配下に置き、去る六月に指導者のバクダーディをカリフ(ムハンマドの後継者)として戴く新国家の樹立を宣言した。この宣言を承認した国家はないけれども、イラク政府軍から鹵獲したアメリカ製兵器で武装し、シリア領内の油田を掌握してゐるといふ同組織の動向は無視し得ない。

 我が国は石油消費量の八割以上を中東地域からの輸入に頼つてゐる。原子力発電の停止に伴つて火力発電用の石油消費量が増加したのみならず、経済成長著しい東南アジア諸国は輸出に充てゝゐた分を自国の消費分に振り向けてをり、中東依存の構造から脱却することは困難だ。さうである以上、中東地域の政治的課題と真正面から向き合ひ、主体的に行動すべきである。少なくとも、国際石油資本の政治的代弁者たる米国の尻馬に乗ることだけは断じて避けねばならない。
(金子宗徳)

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